Q:
W1sa セミトラ化 |
2011-06-22
質問者:高山健二さん
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お忙しい中申し訳ありません。
W1saについて質問です。
セミトラ化したいのですがどのような方法がありますか?またどのような商品選択がベストでしょうか?
メリット・デメリットも教えて頂けたら助かります。
商品の購入も可能でしょうか?
宜しくお願いします。 |
A:お答えします |
お問い合わせありがとうございます。
セミトラについてお話するには、予備知識としてポイント点火とフルトラ点火を
理解してないと、話がつながりません!それでは順序だててお話しを進めましょう。
(コンデンサーは無視してください)
画像はポイント点火です。メインスイッチをONにするとIGコイルに電流が流れますが、
ポイントが開いていると回路が成立しないので、結果的にコイルに電流は流れません。
そしてカム位置が変わりポイントが閉じると、コイルの1次側に電流が流れ、磁束が発生します。
ポイントが開いた瞬間に磁束が消滅し、2次側コイルに逆起電力が起きてプラグに点火します。
要するにポイントは「スイッチ」なんです!! アースのスイッチですね!
'70年代までの国産二輪車はほとんどこのシステムを採用していました。
しかし、空前のバイクブームに沸く当時のメーカーは、販路拡大に邁進します。
付加価値を高める高性能化と、初心者でも簡単に乗れるメンテナンスフリー化が
当時の新型車の大命題となります。
ポイント点火はカムが直接ポイントのヒール部に当たって開け閉めするので、
ヒール部が磨耗し、点火時期は徐々に狂っていきます。
また、ポイントの開閉で電流を断続する為、接点が焼けてしまい、定期的な交換も必要です。
このポイントの交換や点火時期の調整は、多少の整備スキルが必要となり、
初心者にとっては、簡単にできる作業とは言えません。
さらにトレンドは高性能、高回転型エンジンの時代となり、ポイントの開閉が
追いついていかないほどの超高回転型のエンジンが出現します。
きっちりポイントを開け閉めするには、1分間に6?7000回転が限界なんでしょうね?
そんな訳でより精度の高い、よりメンテナンスフリーな点火システムが必要になります。
そして'70年代後期に、やっとトランジスター点火システムが出現する事になります。
ポイントのスイッチ機能の代わりにトランジスターを使用したシステムです。

まあ、言い換えれば無接点のリレースイッチみたいな物です! Eceがバッテリーで、
Ebeで作られた微弱電流(0.3?0.6V)をE-Bに流すと、E-Cにバッテリー電流が流れるんです。
微弱電流はローターに埋め込まれた小さな磁石が、ピックアップコイルの下を
通過した時に発生します。このピックアップコイルの位置で点火時期が決定されます。
精度はポイントの数百倍、無接点ですから磨耗や焼けの心配もありません。
従って一度、点火時期が決定されれば、ほとんど狂う事がなく、再調整の必要がないんです。
こんな良い事ずくめのトランジスター点火システムですが、唯一と言える弱点があります。
電圧の変化に弱いんです!! 電圧が高すぎるとすぐにトランジスターがパンクします!
逆に少しでも電圧が下がると、トランジスターが機能しなくなります!!
高すぎるとパンクするし、低すぎると火が飛ばなくなる厄介な代物なんですよ、こいつは!!
メーカーはこの新点火システムを導入するにあたり、先にやらなければならない事が
ありました。それは充電系統の高性能化と安定化でした。
それまでの機械式レギュレターは廃止され、レクチファイヤー一体式のICレギュレターが
採用されます。また安全装置として、電圧が高くなりすぎるとレギュレターが先にパンクして、
トランジスター点火システムを守る設定が施されます。
社外のフルトラキットを販売する時、口が酸っぱくなる程、電圧管理を叫ぶのはその為です。
そして当時の二輪ユーザーには、大好評でこの新システムは受け入れられました。
DOHC、トランジスター点火、ディスクブレーキ、キャストホイールが当時のトレンドだったんです。
そんな状況で、純正ではない社外のパーツを作るメーカーが、トランジスター点火キットを
売り始めます。うたい文句はいろいろですが、高性能!メンテフリー!強い火花!あたりです。
当時、かなり優れた製品も見受けられましたが、粗悪品も相当出回りました。
トランジスターだったら、何でもありがたかった時代ですから当然の成り行きだと思います。
ポイントをトランジスターに置き換えるのは、いとも簡単な作業ですが、難しいのは、
ピックアップコイルをどこに設置するかが、社外各社の悩みの種でした!
そんな時、誰かが悪知恵を働かせたんです!! ポイントを使っちまおう!!!
わざわざ抵抗を入れて、微弱電流を作り、それをポイント経由でE-Bに流したんです。
発案者はそれをセミトラ方式と名付けました!直訳すると中途半端なトランジスター方式です。
本来セミトラ方式はメーカー純正には存在しません。
無理やり作った感は否めないですよね!だから僕は「時代のあだ花」だと思っています。
しかし、意に反してセミトラ方式は当時大人気になります。
そんな訳で、セミトラの反対語としてフルトラと言うネーミングまで生まれます。
始めはトランジスター点火と言う名前だけだったんですが・・・・・・・
たまに、進角が機械式のままか、電子進角かで、セミトラ・フルトラを区別すると勘違い
されている方を見かけますが、これはまったくの間違いです!!
ここまで読めば、セミトラのメリットはポイント面が焼けない事だけだと気が付くでしょう。
そして、デメリットは非常に大きいと言う事にも、気が付かれたと思います。
充電系が不安定な車両、特にKH250やW1などは、ポイント点火を維持した方が無難です。
そんな訳で当社ではKH250用のフルトラキットを、約10年前に販売取りやめにしました。
実際に装着してみて、良い物だけを販売したい!
そんな気持ちで30年間、商売を続けさせてもらっています。
アールプロ門倉 |
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